おととし2014年3月18日、レスリングワールドカップが開かれました。
父栄勝さんを失って1週間しか経っていない吉田沙保里選手は、出場があやぶまれました。指導者として自分を支え続けてきた栄勝さんは、吉田沙保里選手にとってあまりに偉大なことは誰もが知るところでしたので、出場が決まるやマスコミはこぞって試合会場に押し寄せました。
この試合、実は私は特別席ともいえる家族席で一部始終を見ていました。
前日にお誘いをいただいたのです。
誘ってくれたのは私の前任校の同僚Kさんで、浜口京子さんの高校時代の担任だった方です。「京子ちゃん、京子ちゃん」とよく京子さんの性格のよさを話してくれていました。浜口一家がとても仲がよく、アニマル浜口さん率いる浅草軍団の団結力のみごさなども聞いていました。京子さんはとても女の子らしくかわいい性格だから勝負の世界で長年頑張っていくことについてママから相談されたりすると話していました。
17日夜になってから「チケットがあるのですが明日いかがですか?」と連絡いただいて、行くことにしました。それまでも何度かお誘いを受けていたのですが、いつも用事が入っていました。18日はたまたま空いていたので、「うかがいまぁす!」という運びに。
場所は板橋区にある体育館。
通された席は、アニマル浜口さん・京子さんのお母さまのすぐ近く。紹介していただいて、すぐに「浅草軍団」のTシャツを着るように促されました。一族として日本女子プロレス選手を力いっぱい応援するためです。
試合が始まる前にはアニマルさんのところに一世を風靡しているアスリートたちが挨拶にみえてました。
角界を既に引退していた朝青龍、ロンドンオリンピックで金メダルを取った村田諒太選手、みどりの服を着た女性政治家などなどテレビの向こう側の方たちがすぐ目の前を通っていかれました。
そしていよいよ試合開始。
今回金メダルを取った登坂絵梨選手、土性沙羅選手、伊調馨選手、そして吉田沙保里選手に浜口京子選手といった顔ぶれだったかと思います。
選手の家族席にいましたから、選手たちもすぐそこにいます。だからその息遣いまで聞こえてくるような臨場感がありました。吉田沙保里選手はしきりに後輩たちに声援を送っていました。
そして印象的だったのが、彼女の女子力の高さです。応援しながら後輩の髪を結び直してあげたり、自分の長めの髪も何度も結び直していました。試合に臨む力強さとはまた別の女性らしさを私は感じました。その頃テレビのバラエティー番組によく出演されていて、嵐のメンバーと仲良くする姿にやっかみのような声も聞こえていましたが、実際の沙保里選手を間近でみると、その自然な姿に好感を覚えました。
この日は対戦相手がモンゴルとか中国だったと思います。日本が全勝でした。こんなことは稀なのだと試合の常連である友人Kさんはびっくりしていました。
私が驚いたのは、インタビューです。選手というのは試合が終わって息つく暇もなくマイクを向けられるのですね。勝っても負けても(この日は勝ちばかりではありましたが)すぐに今終わったばかりの試合を振り返っての感想を求められるのです。そしてこの日の主役吉田沙保里選手は亡き父栄勝さんへの感謝の思いを語っていました。
私の席の斜め後ろには沙保里選手のお母さまが座ってらして、やはり取材を受けていました。
翌日は朝・昼・夕方、全てのワイドショーが「吉田沙保里、栄勝さんの思いを胸に」といったレポートをしていました。いつもは見ない番組も、この日はハシゴをして録画してみました。
テレビを見てとても驚いたのは、私の斜め後ろの沙保里選手のお母さまの隣りになんと、あの澤穂希さんがいたことです。友人の吉田選手にカメラを向けているのがテレビに映っていました。澤さんのアップは映りません。いち観客として、ただ応援していたのです。
たくさんのアスリートがアニマルさんに挨拶するなか、澤さんは目立つことは一切せずに、ただ友人として吉田選手の見守りと応援のためだけにに来ていたことがわかりました。たくさんのマスコミの取材が隣りの席の「お母さん」には訪れていたのに、澤さんは「今日の主役は私ではない」と決めて、ひっそりとただ座っていたのですね。これぞ一流だと感心しました。オーラを消していたのかもしれません。
それから間もなく澤さんは結婚の発表をしたのじゃなかったかな。澤さんの人間としての素晴らしさをそんなことから知った私は、結婚の報告を心の底から喜びました。
リオ・オリンピック、吉田選手にとっては4度めのオリンピックです。霊長類最強と呼ばれ、ずっとトップの座を守ってきたこと、どれくらい大変なことだったでしょう。今回は日本選手全体を率いる役もつとめての参加でした。
銀メダルでごめんなさいの言葉に、私は嗚咽してしまいました。今までよく頑張ったじゃない。ずっと1番を保つのは大変だったでしょ。後輩の面倒もよく見てきたよね。いつも自分が率先して掃除をし、声を出し、若い選手のお手本として頑張ってきました。
「お父さんにおこられちゃう!」お母さんとお兄さんに抱きしめられたときにそう言って号泣していたけれど、栄勝さんは「よく頑張った‼」って褒めているとみんな思っていることでしょう。
さらに私は思います。沙保里選手は親友の澤さんと同じように、ひとりの女性として幸せになる道もあるのじゃないかなと。そのためには今回勝ったらやめられなくなってしまう。だからずっとそばにいた栄勝さんは、わざとこの道に引っ張っていったのではないかなと・・・
2014年春の試合において吉田選手の女性としてのかわいらしさを間近で垣間見た私はこんな風に思います。
ありがとう、そしてお疲れ様でした、沙保里さん♡
皆さまはどのようにお考えでしょうか。
本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。