「せかいいちうつくしいぼくの村」という絵本をご存知でしょうか。たくさんの素敵な絵本を世に送り出しているポプラ社から出されている絵本で、アフガニスタンを舞台にした名作です。
作者は小林豊さん。戦争が始まって10年目の夏に、実際にアフガニスタンを旅したときに訪れた村をモデルにして描かれた作品です。訪れた村の人々は戦争のさなかにあっても明るく、力強く生きていたそうです。
絵本はこんな言葉で始まります。
「すもも、さくら、なし、ピスタチオ。はる。パグマンの村は、はなでいっぱいになります。」
そして紙面いっぱいにピンク色の花が咲いています。とても優しい色あいに心が和みます。
主人公の男の子の名前はヤモ。まだ小さいです。にいさんは兵隊になって戦いに行ってます。そのにいさんの代わりにとうさんを手伝うために、ロバのポンパーと町に果物を売りに行くお話です。人々で賑わうバザールの様子、またモスクやチャイハナ(食堂)も、そこに差す光線も、柔らかく美しく描かれています。
ニュースで見る荒れた土地とは全く異なる風景がここにはあります。
とうさんとロバのポンパーと長い道のりを歩いて着いた町は魅力的です。シシカバブの美味しそうな匂いや色とりどりのお店にわくわくする一方で、自分たちの持ってきたさくらんぼが売れるかどうか心配になるヤモ。売るためには大きな声を出してお客を呼びこまなくてはならないからです。
小さな女の子が来てくれてからヤモのさくらんぼはとぶように売れます。お昼を食べてからはとうさんに合流して今度はすももを売ります。そして全部売り切ったヤモにとうさんはご褒美を用意していました。
それはまっしろな羊でした!またながーい道のりを今度は子羊も一緒に村に向かいます。
家に着いたヤモは子羊に「バハール」という名をつけます。「春」という意味です。春になるとにいさんが帰ってくるからです。
次のページはこんな言葉でしめくくられています。
「このとしのふゆ、村はせんそうではかいされ、いまはもうありません。」
アフガニスタンの内戦が一日も早くおわってせかいいち美しい村で会いたいという願いがこめられた、深いメッセージのあるこの絵本。私の最も好きな絵本の一つです。1995年に出版され、2001年にサンタさんのプレゼントとして我が家の長男のもとにやってきた絵本です。
小学校での読み聞かせボランティアでも色々な学年で読ませていただきました。
いま、この絵本、おばあちゃん(義母)のお気に入りとなっています。
家事などできなくなっている義母はどうしても手持ち無沙汰です。プロ級だった裁縫もさっぱりとなってしまいました。そこで鬼嫁の私は、少しでも活性化していただく方法をさがしていた結果、「そうだ!絵本はどうだろう?」となり、渡したところ、どうも文字数や優しい風合いが気に入ったようなのです。
そして時間もたっぷりあるので、内容だけわかればいいやという大人とは違って、絵もまたじっくりゆっくり味わってらっしゃるのです。
絵本の醍醐味を自然と味わっていることに、それを見ている私が新鮮な驚きを感じています。
皆さまもよかったら、この絵本ご覧くださいね。
本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。