ノーサイド by 松任谷由実

20代、高校の教師をしてクラスも受け持っていた頃、自分と年のあまり離れていない生徒たちの言動に一喜一憂して、仕事の要領も悪くて、全てを真に受けて空回りしていたことがありました。いま思えば、それらも皆自分を育ててくれたこととして捉えることもできますが、そのときは来る日も来る日もエンドレスにやることが押し寄せてくることにくたびれていました。

ベトナムのベトちゃんドクちゃんがニュースで話題になっていたことも知らずに、生徒に「いま、みんな知ってることだよ~」と驚かれたのを覚えています。恥ずかしかったからです。

アイロンのかかってないハンカチを使っていて「先生アイロンくらいかけなきゃダメじゃん、お嫁に行けないよ」なんて心配されたこともあります。

ニュースも見なければ、流行にも疎くて、狭い世界で必死にもがいていました。ですから、その頃流行ったドラマや歌など、私の歴史からは落っこちてしまっています。

ユーミンのこの曲も生徒が教えてくれました。私が教師として経験した何回目かの合唱祭の曲として生徒たちが選んだことで知った曲でした。

 

ノーサイド 作詞・作曲・歌 松任谷由実

彼は目を閉じて 枯れた芝生の匂い 深く吸った

長いリーグ戦しめくくるキックは ゴールをそれた

 

肩を落として土をはらった

ゆるやかな冬の日の黄昏に

彼はもう二度とかぐことのない風 深く吸った

 

何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの 誰も知らず

 

歓声よりも長く 興奮よりも速く

走ろうとしていたあなたを少しでもわかりたいから

 

人々がみんな立ち去っても 私ここにいるわ

 

同じゼッケン誰かがつけて

また次のシーズンを駆けてゆく

 

人々がみんなあなたを忘れても ここにいるわ

人々がみんな立ち去っても私 ここにいるわ

 

昨年五郎丸選手などの活躍で、ラグビーは今までにない程の脚光を浴びましたが、「ノーサイド」とはラグビーで試合終了のことです。もはや敵味方はないよという、闘い終わって互いの健闘をたたえあう意味があります。倒されても倒されても何度も立ち上がる選手たち、「ONE FOR All,  All FOR ONE 」の精神で、泥と汗まみれになった選手たちのすがすがしい姿を思い描くことのできる美しい言葉です。

 

ユーミンは私がいるここから近い八王子の出身です。荒井呉服店がご実家です。彼女の独特なファッションセンスはそのことと無縁ではないと思います。多摩美と呼ばれる芸術方面で活躍する方たちを生みだした八王子にある大学で染色を学んだそうです。

次女が成人を迎える前だったか、「振袖はお任せください」と荒井呉服店の宣伝の方が訪ねていらっしゃいました。既に用意したものがあったので残念ながらご縁はなかったのですが、ちょうど「春よ、来い」が震災の復興でまた注目されていた時でした。「また活躍させていただいてます」とお店の方がおっしゃっていたのが印象に残っています。

「乙亥(きのとい)」の日干をユーミンは持っています。水をあらわす「亥」がご主人の位置となります。お花である「乙」を育てる「亥」という「水」が松任谷正隆氏であり、実際に正隆氏は「癸(みずのと)」の雨の水の方です。お花に優しく降りそそぐ雨の水を得て、ユーミンは荒井姓から松任谷姓となってもずっとずっと活躍しているのでしょう。

ユーミンは1月19日生まれ、正隆氏は11月19日生まれ。数字の並びも面白い関係がありそうです。

この世界、まだまだ奥が深いです。

今日もおつきあいいただきましてありがとうございました。