四柱推命における通名星 その5「比肩」「劫財」の自星

鑑定を依頼されると、まず命式をこしらえます。テーブルでクライアントと向かい合わせになって、いざ始めましょうという時、多くの方が「私は強いですか?」とお尋ねになります。ここで皆様に質問です。「強い」ということはよいことでしょうか?

確かに「弱い」よりよい気がしますね。しかし実際に鑑定させていただくと、「弱い」タイプの方たちの多くは柔軟思考ができる良さをお持ちです。案外「強い」タイプの方で自分のこだわりが強すぎて苦しんでる方は多くいらっしゃいます。揺るぎ無い自分を持っていると表現すればステキですけれども、自分を曲げられないがために人と協調できなかったり、無用な強がりをされたりして本当は困っている「強い」方は案外多いのです。

「天才」という石原慎太郎氏の本の売り上げがよいみたいですが、その天才とうたわれた田中角栄は身弱の人です。意外に思われるのではないかと思います。

強いとは、自分自身と同じ五行がたくさんあることが四柱推命での基本です。そして、その自分を意味する星を自星と言います。

つまり、「木」の人なら「木」を意味するものが命式中にたくさんあらわれると、その人は強いということです。まとめてみますね。

「木」の人・・・「木」をあらわす十干十二支

「火」の人・・・「火」をあらわす十干十二支

「土」の人・・・「土」をあらわす十干十二支

「金」の人・・・「金」をあらわす十干十二支

「水」の人・・・「水」をあらわす十干十二支

これらが「比肩」(ひけん)・「劫財」(ごうざい)になるものです。

昨晩はここまでアップしたところで、睡魔に負けてしまいました。前日の夜更かしがたたりました。物足りない内容で申し訳ありませんでした。大切な友からのせっかくのメールにも「眠い」だけの返信をした気がします。あるいは返信しそびれたか・・・ごめんなさい。さあ続きです!

 

自分を強めるものの一つのかたちである「自星」がテーマでしたね。

生・年・月・日のそれぞれを十干十二支であらわしたものが命式の基盤です。命式の中にあらわれたものは全て紛れもない自分なのですが、最も自分自身をあらわすのが日にちの柱にある十干です。それを「日干」と呼びます。

その日干と同じ五行が「比肩(ひけん)」であり「劫財(ごうざい)」です。

そのうち「日干」と陰陽が同じものを「比肩」と呼びます。「比」は人が同じ方向を向いて並んでいることをあらわす漢字です。背中合わせだと「北」となります。漢文で「北ぐ(にぐ)」とあったら「逃げる」こと、つまり背中を向けることを意味します。

つまり、甲(きのえ)には甲(きのえ)が、乙(きのと)には乙(きのと)が「比肩」です。

「比肩」とは、まさに同じくらいの力量のものが肩を並べている姿ですから「比肩」が意味するものは、「自我」であり「自主独立」です。さらに「兄弟」や、同じような家をもう一つ持つという意味で「分家」、子どもに相当する存在ということで「養子」などもあらわします。そして悪く作用すると、自分と同じような存在が同じ力で何か唱えるわけですから「不和」にもつながります。

今回シリーズで取り上げている「通名星」は、「生まれた月」の「支」にあらわれた「月支通名星(げっしつうめいせい)」が一番強く作用すると考えられます。その「月支通名星」に「比肩」がある人の特徴は、自立心が強くてしっかりしている、行動力に加え意志力もある、自分が納得しないうちはてこでも動かない、つい人と張り合ってしまう、負けず嫌いである、言い出したらきかないといった傾向があります。

この星が命式内にたくさんあらわれると自意識過剰であったり、交際に円満を欠きその結果孤立しやすいということになります。

 

一方「劫財(ごうざい)」は「日干」と陰陽が逆の星です。

甲(きのえ)には乙(きのと)、乙(きのと)には甲(きのえ)ということです。

「劫」という漢字は、人が去ろうとしているのを力ずくでおし止めることだそうです(「全訳漢辞海」参照)

なかなか物騒な感じがいたしますが、そのあらわすところはというと自尊心、自己本位、独立、です。「比肩」が、全く同じものが並ぶ姿であるのに対し、「劫財」はよく似た者だけど陰陽が異なるものが並ぶわけですから、「よく見たら違ってたぁ」という現象が見られます。つまり二重人格ということです。

みかけは大人しそうなのに実は強い自己顕示欲のある人とか、強がってはいるけれども本当は花にも涙するような人だとか・・・ギャップがあるといえば魅力にもなるかもしれませんが、特に「比肩」と「劫財」と並んでいると二重人格の傾向は高くなります。

「劫財」が「月支通名星」にあると、表面と中身が違う、見栄っ張り、人の言うことを聞かないタイプだといえるでしょうか。また「劫」は「去っていくものを力でとどめる」ことなのですが、この「劫財」の人は見栄っ張りであることから散財傾向にもあり、となるといくらおしとどめようとしても残らないので駆け引きもしようとします。

さあこんな「比肩」「劫財」の人に適した職業というのがあります。人のいうことは聞かない、自分が強いといった特徴があるのですから、ズバリ自営業が向いているのです。人に使われているうちは不満が絶えないので、自力をつけて独立したなんて人もこの星の人にはたくさんいます。作家やシナリオライターにも多くいらっしゃいます。

大学卒業後、銀行に勤務が決まったのに、初出社する途中で信号待ちしているときに「やーめた!」と退社してしまったあの人が、この「比肩」の人です。「ミッドナイトエクスプレス」で知られる沢木耕太郎です。

1947年11月29日のお生まれですから

年 丁(ひのと)亥(い)比肩

月 辛(かのと)亥(い)比肩

日 壬(みずのえ)子(ね)劫財 という命式になります。

自分自身である「水」の勢いがめちゃくちゃ強い人だということがわかります。このようなタイプの人に枠におさまってろというのが無理というものです。日干が、滔々と流れる大河である「壬(みずのえ)」ですから、自由を求めて生きたい人、さらに「壬子」(みずのえね)は「日刃」(にちじん)と呼ばれるもので旺盛な勢いを持つ人ですが、その強さゆえ配偶者を尅することになりかねません。

よい関係を保つためには、敢えて別居するなどの方法もあります。昨年結婚した福山雅治もこの「壬子」の「日刃」の人です。彼はほかにも人気や才能をあらわす星をたくさんお持ちで実に多才ですが、同居する相手の女性は大変なこともあることが予測されます。大変でない人生などありませんから、賢い吹石一恵さんはそれも全て承知の上で結婚に踏み切ったことでしょう。

沢木耕太郎という人物に興味を覚えたのは、ご自身もバックパックひとつで世界を旅されたというMさんにお借りした「深夜特急」というビデオに感銘を覚えたからです。以前にもご紹介した「鍼」の先生です。大沢たかお演じる主人公は、沢木氏本人をモデルとしたものですが、旅先で出会う美しいばかりではない景色、各国を渡り歩く中での土地の人との出会い、時にパスポートを盗まれ、時にテロリストと疑われ、ある時は下痢に苦しみ、ある時は寒さに凍えてそれでも旅を続ける強さはどこからくるのか知りたいと思ったのでした。

そして「比肩」の人だと判明しました。自分で納得しない限り、このタイプの人は動かないし、いったん動き始めたら納得するまでやめない・・・なるほど!腑に落ちました。

 

「比肩」と「劫財」について少しはおわかりいただけたでしょうか。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。