文様にこめた願い~着物デザイナー藤森民人の場合

鑑定の仕事を始めて間もない頃、お着物作家の藤森民人先生にお会いして、ご自分の手がけた着物の文様についての熱い思いをうかがいました。「古都音(ことね)」というブランドを立ち上げて、デザインのイメージを膨らますために日本の各地を旅されています。また作品の発表と、その着物の文様にこめた思いを語り、伝える活動も意欲的になさっています。

そんな旅先のひとつ、東京郊外にある「百花」というお店で出会った藤森氏の熱き思いに強く心が動いて、HP立ち上げの時に身に着けました。その藤森先生と今日10ヶ月ぶりにお目にかかりました。

昨年お会いしてからますますその価値が高く評価され続けているようで、先生のデザインされた帯や着物は女優さんやタレントさんの心も鷲掴みです。宮沢りえさん、木村佳乃さん、阿川佐和子さんが着用されているお写真を拝見しました。特に阿川さんは、雑誌の撮影でお着物を召されるにあたり、藤森先生の帯の柄が大変気に入ったとのことで、まだ仕立てていない帯をどうしてもと仕立てたもののように着用されたのだそうです。

そんな藤森先生から、実は私のHP立ち上げ時に、言葉を寄せていただいておりました。タイミングをうまくつかめないままに今日まできてしまったのですが、今日の再会を機に紹介させていただきますね。

 

「結~YUI~」をメインテーマに創作した着物と帯をお届けしました。「古都音(ことね)」のブランドコンセプトが「日本のわすれもの」というものです。祈り・願い・念いをかたちにしています。日本人がハレの日には欠かせないもの、それが「結(ゆい)」なのです。

神社には必ず注連縄(しめなわ)があり、稲妻を表すお飾りが施されます。しめ縄には俗世と神聖な場を分ける「結界」の意があり、また稲妻は「稲の妻」と書くように、稲に雷が落ちることで稲の穂が実るとされてきました。あのギザギザにはこのような由来が隠されているのです。

師走の28日までに大掃除をして一年のケガレを払いお飾りを飾りますが、そのお飾りにつける稲妻状の御幣(ごへい)も同じ意味を持ちます。

身近な「結(ゆい)」としては、快気祝いや結婚祝いなどに欠かせない水引(みずひき)があります。水引の文化には、単なる装飾やラッピングとしての意味合いを超えた深い精神性が込められているといえましょう。

古来キモノはキモン(鬼門)を着るということで、身に着ける衣裳にほどこす意匠〈デザイン〉にも必ず大切な意味がありました。それを身に着けることで、災いや災難から身を守り、良きご縁に結ばれ、末代まで幸せが永続するコトを願うモノであったのです。

現代の日本の社会だからこそ、確かに受け継いでいきたい文様の世界がここにあります。(藤森民人)

 

最近ではアイヌの文様に心が動かされて白老町に赴いてアイヌの方たちとの交流をはかってらしたそうです。同じ思いで沖縄にも行き、おおいに創作意欲がかきたてられたそうです。口承の文化だからこそ、言葉以上に文様に込めた思いは深いと感じられたと聞いて、先日放送された「SONGLINE~歌い継ぐ者たち」というNHKの番組で、アボリジニのヨルング族や、中国の貴州省占里村(せんりむら)に暮らすトン族と音楽での交流をした福山雅治のことが思い出されました。

ラッキーなことに、今日はモニターとして出来たばかりの新しい文様を織り込んだ反物を羽織らせていただきました。洋装のドレスにも負けないインパクトを持ちつつ、輪違(わちがい)の文様を大切にされたものです。ダイヤモンドと見紛うようにプラチナが織り込んであり、動きによって微妙に異なり、揺れるような輝きが生まれるそうです。

帯はタンポポをデザインしたもので、笑顔の象徴であるタンポポと、そこからはじけ飛ぶ種が描かれています。

藤森先生のお着物を着る人、見る人に笑顔の花がたくさん咲きますように。

 

CIMG2448CIMG2446