2016年11月3日、つまり昨年の文化の日に、神奈川県大和市の芸術文化センターが新しく「SiRīUS〈シリウス〉」という名前で生まれ変わりました。シリウスとはご存知「おおいぬ座」の一等星。冬の空にひときわ明るく輝く星です。文化活動が未来にわたって輝きを放つようにと名付けられたとのことです。
ラッキーなことに、昨日はその生まれ変わったばかりのホールで二胡の演奏会がありました。11月半ばに師の牧先生からお誘いいただき、その時点で予定の入っていなかった私とSさんのみ、「参加しまぁす!」なんてふたつ返事で答えてしまったのでした。
演奏会は発表会ではありません。会を率いる張会斌(ちょうかいびん)先生の門下生で、合奏団の方たちで既にお教室を担当している講師の方たちが主に演奏する会なのです。
そこに、音程もまだしっかりしてない私が加わることになりました。練習やリハーサルの日はだいたい用事かはいってしまうという始末でした。
あまりに皆さまに失礼なので、前日は一生懸命に練習に励む日としました。夜更けまで必死に練習しました・・・が、付け焼刃です。本当に音楽を愛する方には信じられないことだろうと思います。
そして迎えた当日。270名入る会場は満員御礼となり、入場をお断りせねばならない程の盛況ぶりでした。張会斌先生の高い芸術性と、人のつながりを大切になさるお人柄と、それを愛する講師の方たちの熱意によるものと思われます。
私とSさんの出番はフィナーレの大合奏です。曲目は6曲。「阿里山的姑娘」「Tennessee Waltz(テネシーワルツ)」、新疆ウズベク族の民謡の一つ「ヴェールをあげて」、「上を向いて歩こう」「ふるさと」そして井上陽水の「少年時代」です。
「阿里山的姑娘」は、台湾の民族の歌がもとになっているもので、阿里山の娘は谷川の水のように清らかであるという意味らしいです。テンポがよく、とても調子のよい曲です。
「テネシーワルツ」は途中で下のパートを担当しますが、それがまた素敵です。ワルツを踊った昔を懐かしむ歌で、ゆったりと落ち着いた大人のムードの曲です。日本では江利チエミが歌って大ヒットした名曲でもあります。
「ヴェールをあげて」は、結婚式で歌われる曲。花婿さんが、花嫁の顔を見たくて「お花のついたヴェールを上げてお顔を見せてください」とよびかける歌。途中から中国語でみんなで歌います。だんだん速度が速まり最後に掛け声で終わる楽しい曲。
講師レベルの方たちの中での演奏は、とても楽しいものでした。途中「やめるべきか」と悩みましたが、結果的に参加できてラッキーでした♡
実は、行きの電車では、Sさんと共にミニ反省会を開いてました。忙しい仲間の中で最も忙しいSさんは「あっ、しまった!昨日お孫ちゃんの誕生日だった‼」とうっかりしてしまうくらいあちこち引っ張りだこの方。常勤の仕事に、5つも6つもある趣味にとパワフルに動きまわる日々。そんな中、たまたま15日のみスケジュールが空いていたから「参加します」と言っちゃった。
よく考えないで「楽しそう!」と思ったら手をあげてしまうところは私も同じです。熟慮とは対極にいるふたり・・・
楽しいことには反射的に反応してしまう代わりに「できない」と認識する神経が驚くほど鈍感なのです。
牧先生も、会を率いる張先生も器が大きいから許されるものの、最も経験も実力も足りない私がリハーサル無しの本番だけの参加で申し訳ない思いです。牧先生が楽譜も音源もパソコンで送って下さり、ひと言も文句もおっしゃることなく、色々な体験をさせて下さろうとする心意気にたすけられました。
それにしても、「これからは気をつけて返事をしないとなぁ」と思うのでした。
これを書きながらテレビで松岡修造のスポーツ担当コーナーを見ていましたら、「鈍感が幸いした」として柔道の大会で何度も優勝を果たしてきた舟久保遥香選手が紹介されていました。
「能力ゼロ‼」、彼女の担当コーチは最初そう思ったそうです。体格もマッチ棒みたいだったと語るのは本人です。
それなのに、「オリンピックに出る‼」と本人だけがそう思っていたそうです。
能力がないので、ほかの選手が楽々できることが全くできなかったそうです。それが悔しくて思いついたのが、懸垂を3時間ぶっつづけにやることだったといいます。
いっけん柔道とは関係なさそうな懸垂が、その後の彼女の柔道の強みとなっていきます。強い腕の力で、相手をぐっと自分に引き寄せるわざを体得したのだそうです。そのワザは彼女の名までつけられる程の力強いものです。
彼女を世界に導いたものは、稀に見る「鈍感力」と言えるかもしれません。そこには人一倍の負けず嫌いとか、悔しさをバネにする根性とかも当然あるでしょうが、誰が何と言おうと「私はできる‼」と思いこむ鈍感力こそ大きな宝かもしれないなぁと番組を見ていて思いました。
余計なことはあまり考えず、直観(直感)に任せて「やります!」と答えてしまったSさんと私も、結果がよかったのでラッキーだったと思います。ビギナーズラックだったかもしれません。
うん、鈍感も時にはラッキーを招くかもしれません。
本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。