長倉洋海さんにばったり!

だいたいにおいて楽天家の私なのですが、時間がない中での慣れない介護はなかなかに神経と筋力、そして想像力を使います。義母が何を欲しているのか、言葉で伝えることがだんだん難しくなっている義母の心の声をしっかり受け止めるのは修行中の私には・・・うまく表現できません。

ドーナツそのものよりも、ドーナツの穴の大きさが気になってしまいがちな義母が少しでもプラスの気持ちを多く持って過ごせるように、というのが日々の願いです。

 

さて今日は仕事の帰りの乗り物の中で、フォトジャーナリストの長倉洋海(ながくらひろみ)さんをお見かけしました。

最初にお見かけしたときは、もう8年程前、ちょうど長倉さんの著書「ぼくが見てきた戦争と平和」を読んでいた時でした。しかもその本を薦める方に会いに行く途上でした。

次にお見かけしたのは海外から帰ってらしたタイミングで、新宿で旅行スーツケースを持ってらしたとき。

その後いろいろなところでお見かけしておりましたが、今日はいつかと同じようにまた目の前に座っていらっしゃるのです。

これまで世界60か国以上も巡って様々な人々と心の交流をされてきた長倉さんは、憧れの方です。その方が目の前にいらっしゃる。しかもこれまで何度もあったチャンスは見逃してきたので、今日こそ!の思いで乗り物を下りるタイミングでお声をかけてみました。ちょうど同じところで降りられたからです。

シベリアから帰ってらしたばかりとのこと。お疲れもおありでしょうに、目にとても力を感じました。そして優しさも。歩きながらのほんの5分にも満たないような時間でお話することができました。

本当にすごい方は、普通にお話してくださるものなのです。そして時間のない中でも、耳を傾けて下さいます。年齢や性別は関係ありません。

数ある長倉さんの写真の中で私が最も心惹かれたのは、読書するマスードの写真です。これをお伝えしたかった。そしてお伝えできました。

読書するマスードのまわりには、静謐な時間が流れているように思います。

祖国アフガニスタンの戦乱を平和的に会話によって解決して民主的な政権が誕生することを願っていたマスード。寝る間を惜しんで読書する程の本好きで、タリバンの攻撃により首都から撤退するときも、蔵書3000冊を持ちだしたと言われています。真っ暗な中、ペンライトで読書していたそうです。

そして「戦争が終わり国が解放されたら、国民が信頼できる人に政治は任せて、大学で建築学を学び直したい」と語っていたといいます。

ところが、同時多発テロの2日前の2001年9月9日、暗殺されてしまいます。悲しいことです。

長倉さんの鋭い眼光と同時に持ってらっしゃる優しい瞳は、そのマスードのこともかつて見つめたのだなあと思うと、実に感慨深いのでした。

お会いした記念にサインを頂戴しました。

IMG_4663

 

いったん「じゃ、これで」とおっしゃったあと、「そうだ、これから郵便局に行くんだった!」ととても気さくなお人柄でした。

これからも長倉さんの撮影されるお写真からは目が離せません。

 

義母のお世話をさせていただくご褒美を今日も与えていただけた思いです。

大変なことと喜びが交互にやってくる不思議な私の人生。

本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。

ぜひ、長倉さんの撮られたマスードの写真、ご覧くださいね。