America from West Side Story

イギリスのEU離脱というニュースに世界が驚き、英国の国家が解体するのではと危ぶむ人もいるくらいです。雇用や経済の問題も心配されています。いったいどうなってしまうのでしょう。

かつての大英帝国〈Great Britain〉がこんなに混乱する姿は見ていて辛いものがあります。離脱に投票した人たちの中に、投票のやり直しを求める声が上がっていると言います。まさか本当に離脱という結果が出るとは思わなかったというのです。

しかし、大英帝国という発想があるからこそ、独自のやり方でやっていこうという考え方が根強く残っていたともいえるかもしれません。年配の方たちに離脱を望む割合が多かったとのことです。

20代のとき、イギリスのイーストボーンという海に近い町に2週間滞在したことがあります。ロンドンから南に汽車で3時間下ったところにある町です。ホームステイした先のお父さんは、肌の色をよく話題にしていました。イギリスやフランスには肌の黒い人が結構いるのですが、「あんなやつらは国に帰っちまえばいいんだ」みたいなことをよく口にしていました。

ずいぶん排他的な考えの人でした。あまり親しみを覚えませんでしたので、あたたかな雰囲気の家庭にステイしている仲間のおうちに遊びに行ったりさせてもらいました。イギリスというとあのお父さんのような人もいるんだなということが思い出されます。

また、旅行会社の方が伝統あるゴルフの倶楽部に連れて行って下さったときのこと。ゴルフクラブなんて触ったこともなければ、芝生に立つのもはじめてみたいなメンバー5人がそれぞれ1回ずつカコーンとゴルフ球を打ち終わったそのタイミングで、”Get out of here!”(出ていけ‼)と言われ、仕方ないよねと思ったことも鮮明に覚えています。

「ここは伝統と格式のあるクラブですぞ。あんたたちの来るところじゃない!」ということのようでした。シャーロック・ホームズのような上等なツイード生地で出来たチェックの服をジェントルマンたちはお召しでした。ズボンの丈は皆さんニッカボッカのような短いものでした。

こういう出で立ちでない者は入れないところなんだよと言われたような気がします。

そうでしょうね、と私たちは即刻退散しました。

イギリスというと伝統・格式という言葉が真っ先に思われるのは、こんな経験をしたからかもしれません。

今回のEU離脱に応援に行っていた人がいます。そう、どんなカードを出してくるかわからないトランプ氏です。「ほーら、言った通りだ!」とかなりご満悦でいらしたそうです。アメリカの大統領選挙にも強い影響があること必至ですが、どうぞ排他的な風潮は広まりませんように。

かつてアメリカに希望を求めて渡った移民たちの心模様を歌ったのが今日の曲です。

ウエストサイドストーリーよりAmerica by Leonard Bernstein

Puerto Rico                プエルトリコ

My heart devotion  心を捧げているものの

Let it sink back in the ocean 海に沈めてしまおう

Always the hurricane blowing いつだってハリケーンが吹いて

Always the population growing いつだって人口は増えていく

 

And the money owing     借金はかさんで

And the sunlight streaming   陽射しは絶え間なく照りつけ  

And the native steaming    ネイティブは暑さにうだってる    

I lke the island Manhattan   私はマンハッタンがいいわ

Smoke on your pipe      あなたがふかしているパイプ

And put that in!        そこに詰めてしまおう!

 

I like to be in America     アメリカはいいわ

Okay by me in America     私はここがいいの

Everything free in America   何もかもが自由よ

For a small fee in America   賃金は安いけどね

 

Buying on credit is so nice   カードで買い物かっこいい

One look at us and they charge twice 値段を倍にされてもか

I’ll have my own washing machine  洗濯機を買うわ、自分用のね

What will you have through to keep clean? それて一体何を洗うんだい

 

Skyscrapers bloom in America    摩天楼がすっくと立つアメリカ

Cadillacs zoom in America     キャデラックがブーンとうなるアメリカ

Industry boom in America      産業がグーッと栄えるアメリカ

Twelve in a room in America    部屋はぎゅうぎゅうだけどねアメリカじゃ

 

Lots of new housing with more space  もう少し広い新築のお家いいわね

Lots of doors slaming in our face    顔の前でバタッとドアをしめられちまうけどね

I’ll get a terrace apartment      テラスのあるお家を手に入れるわ

Better get rid of your accent     訛りを直す方がいいよ

 

Life can be bright in America    生活が輝いてるわアメリカでは

If you can fight in America     ここで闘っていけるならね     

Life is all right in America     生活はいいわよアメリカでは

If you’re all white in America    肌が白いのならね

 

Here you are free and you have pride  自由と誇りを持てるのよ

Long as you stay on your own side   自分の居場所にい続けられればね

Free to be anything you choose    なんでも好きに選べるの

Free to wait tables and shine shoes   テーブルに付くまで待つことも靴を磨くのも

 

Everywhere grime in America     どこも埃だらけのアメリカ     

Organized crime in America      組織ぐるみの犯罪が横行するアメリカ

Terrible  time in America       アメリカは今ひどい時代なのさ

You forget I’m in America       そのアメリカにいることを忘れてるでしょ

 

I think I’ll go back to San Juan    サンホアンに帰ろうかな

I know what boat you can get on   乗り込めるボートを知ってるわ

Everyone there will give big cheers  みんな大歓迎で迎えてくれるね

Everyone there will have moved here みんなこっちに来ているわ

 

アメリカという国をどのフレーズもユーモアたっぷりに、憧れと失望とを表現していておもしろいです。男女掛け合いになっていて深刻な社会問題をコミカルに表現しています。テンポよいリズムに乗せて、軽やかに踊りながら歌うこの歌のファンは多いようで私もそのひとりです。

プエルト・リコの移民から成る「シャーク団」のリーダーベルナルドの彼女アニタは、大人の女性の妖しさと包容力と哀しさを併せ持って魅力がありますが、その役でアカデミー賞を獲得したリタ・モレノの命式も知性と情感をあらわす「水」がたっぷりあります。

アカデミー賞のほか、トニー賞、グラミー賞、そしてエミー賞の大きな4つの賞を獲得しています。そんな人は史上9人しかいないそうです。

本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。

あなたは、あなたにとっての最高賞を獲得なさって下さいませ。