実に強いメッセージのこもった作品でした。劇団四季による「ウエストサイドストーリー」です。昨日娘の一人と観に行ってきました。
この映画の4年後に「サウンドオブミュージック」でも監督賞を受賞したロバート・ワイズがこの作品で監督賞を獲得しています。アカデミー賞でノミネートされた11部門のうち10部門で受賞するという快挙を成し遂げた作品です。
こんなことを知らないで中学2年生のときに同じ軟式テニス部の友人数人と観に行き、それからしばらくは「不良」の存在に憧れの気持ちを抱くようになってしまったイカレ具合でした。それ程強いインパクトを受けた私は何としても映画の中の歌に触れたくて、録音テープがすりきれる程繰り返し聴いていました。
不良グループのうちでも「ジェット団」のアイスに特に惹かれました。いきり立つ仲間に「落ち着け、Just play it cool,boy!」と諭すように歌う「Cool」にしびれました。
ポーランド系移民ゆえに金髪に白い肌をもつ「ジェット団」の方が当時はステキに見えたのかもしれません。その後あらためて観ると、黒い肌ゆえに差別される「シャーク団」のリーダー役のジョージ・チャキリスとその彼女の役を演じたリタ・モレノがとても魅力的に見えました。
それにしても作品のストーリーも構成も音楽もダンスも全て完璧にできあがったこの「ウエストサイドストーリー」をどのようにミュージカルに仕立てるのか、そこにどんな意味合いを持たせるのかワクワクして幕が開くのを心待ちにしたのでした。
キレのあるダンスに美しい歌声はさすがでした。劇団四季らしい妙にはっきりしたセリフの言い回しに最初は慣れませんでしたが、そんなことはどうでもよいくらいにどのシーンもどの人物も完璧で、原作を裏切ることなく見事でした。
劇団四季の特徴の一つとして、どの歌も日本語に直して歌うということがありますが、あれだけの名曲を日本語としても魅力あるように翻訳するのだけでも大変なことだと思います。いやぁ、大変なことに挑むものです。
今日は数ある魅力的なナンバーの中でも美しい主人公マリアを歌い上げたこの曲。
Maria by Leonard Bernstein(レナード・バーンスタイン)
Maria
The most beautiful sound I ever heard 今まで聞いた最も美しい響き
Maria, Maria, Maria…
All the beautiful sounds of the world in a single word 世界の全ての美しい響きがこの言葉にはある
Maria,Maria,Maria…
Maria!
I’ve just met a girl named Maria, マリアという女性に出会ってしまった
And suddenly that name そしてその名前は突然
Will never be the same to me これまでとは異なるものとなったんだ
Maria!
I’ve just kissed a girl named Maria, マリアという名の女性と口づけした
And suddenly I’ve found そしたら気づいたんだ
How wonderful a sound can be! マリアという響きがどんなに素敵かって
Maria!
Say it loud and there’s music playing, はっきりと口にすれば音楽のよう
Say it soft and it’s almost like praying ひそやかに口にすると祈りの言葉のよう
Maria,I’ll never stop saying Maria! マリア、とずっと言葉にし続けるよ
The most beautiful sound I ever heard 耳にした最も美しい響きだよ、
Maria!
ポーランド系移民の不良グループ「ジェット団」の元リーダートニーが、ダンスパーティでひとめで互いに魅かれあった娘の名がマリアだと知り、一音ずつ確認するかのように大切に愛おしそうに高らかに歌い上げる曲です。
マリアは「ジェット団」と対立する「シャーク団」のリーダーの妹。プエルトリコからアメリカにやって来たスペイン系移民なので肌の色は浅黒く、それだけで差別の対象です。
映画では「ジェット団」も「シャーク団」も共に社会から爪はじきにされている不良という描かれ方だと私は認識してきたのですが、劇団四季の今回の演出では、アメリカのウエストサイドに限らず、今世界に蔓延している自分と異なるものを排斥する風潮への警告を描きたかったのだと感じました。
民族対立がいけないということはあの第二次世界大戦で終結したのだと思っていたのは慢心でした。うっかりしました。その後もベトナム・アフガニスタン・ユーゴスラビア・・・そして今もシリアの問題がありますね。知らぬ間に世界は、移民・難民を受け入れず追い出し、武器を持つ用意を始め、戦いの準備を始めているように思います。
若者が抱える問題はsocial disease(ソーシャル・ディズィーズ)、つまり社会の問題なんだと映画の中で歌われますが、今回のミュージカルの中では、昔のアメリカの問題なんかではなく、今現在の日本の、そして世界の病気だという問題提起に思えました。
浅利慶太が何故いまこの「ウエストサイドストーリー」を2部仕立てにして争いのない穏やかで平和な世界を一瞬描いて見せたかがわかった時、不意に涙が溢れました。心の奥につきささりました。感動でしばらく席が立てませんでした。原作の素晴らしさを保ちつつ、新たなメッセージを注ぎ込みました。さすがです‼
さて、ウエストサイドストーリー名曲のほかにも優れた曲を数多く生みだしたレナード・バーンスタインの命式は
年 戊(つちのえ)午(うま)
月 庚(かのえ) 申(さる)
日 甲(きのえ) 辰(たつ)
「戊」「庚」「甲」が3つ揃い、みごとに仕事上の天才の星を持っていらっしゃいます。特殊星としては芸術方面に秀でるとされる「華蓋(かがい)」もお持ちです。
本日もお読みいただきましてありがとうございました。
平和な穏やかな日をつくりあげていく決心を世界がしていけますように。